何かと問題が明るみになっている不動産業界。
アパートを退去する際に退去の立会いをすることになりますが、特に退去費用に気をつけてください。
残念なことですが、中には費用を上乗せして請求をしてくる不動産業者が存在します。
僕は先日アパートを退去したのですが、退去立会いの際に必ず知っておくべき知識があったのでまとめておきます。
何十万円も請求されそうで不安。
何にどれくらいの費用がかかるのかわからない。
請求された金額は必ず払わなければいけないの?
これから退去の立会いがある方で、上記のような不安や疑問を抱いている方は、ぜひ参考にしてみてください。
知ってるだけで、支払いが数万円〜数十万円単位で変わります!
退去の立会いで重要な「原状回復」とは?
①借り主(あなた)は原状回復の義務がある

まず前提として、退去して物件を明け渡す時に、借り主(あなた)は原状回復の義務を負います。
現状回復とは「元の状態に戻すこと」です。
ただし、入居時の状態に戻す必要はありません。
物件に関しては日々劣化していくものなので、自然に劣化していった部分に関しては、負担をする必要はないのです。
これを物件が劣化していくことを「経年劣化」といいます。
原状回復に当てはまるのは、借り主が意図的に壊したり、過失で破損してしまった部分のみです。
なんでもかんでも借り主に負担させようとしてくる業者もいるので、自分が負担する必要があるものはどれなのか、事前にしっかり把握しておきましょう。
詳しくは国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」としてまとめているので、一度目を通してみてください。
下記に主なものをまとめておきます。
【借り主が負担する必要がないもの】
- 壁や床の日焼け跡
- 冷蔵庫などによる電気焼け
- 家具による床のへこみ
- 画びょうのあと
- 網戸の張替え
- 床のワックスがけ
- 退去時の電球交換
【借り主が負担する必要があるもの】
- 壁や床、ドア、戸棚などの破損・汚損
- 家具の移動などで付いた傷
- タバコによる焦げ跡やヤニ跡
- 結露によるサッシなどのカビ
- 飲み物をこぼしてできたシミ
- ペットによる傷や臭い
- 水漏れなどの放置による腐食
- 借り主は退去時に原状回復の義務を負う
- ただし、経年劣化に関しては負担する必要はない
②負担費用は経年劣化の分を差し引く

破損してしまった部分を修繕する場合は、全額負担ではなく経年劣化の分を差し引いた金額を負担します。
どういうことかというと、消耗品には「普通に使った場合にこれくらいの期間は使用できる」という期間が設けられています。
これを「耐用年数」といいます。
例えば、あなたが3年間住んで退去する際に、クロス(壁紙)を傷つけてしまって張替えとなったとします。
この際、クロスの新調に3万円がかかるとなっても、全額を払う必要はありません。
クロスの耐用年数は6年なので、3年経過している場合は残りの3年分のみを負担すればよいとされているのです。
つまり、クロス(耐用年数6年)を3万円で新調する場合は
居住年数 | 負担費用 |
1年 | 25,000円 |
3年 | 15,000円 |
6年以上 | 1円(計算上0円にはならない) |
このように長く住めば住むほど経年劣化の割合が大きくなっていくので、負担する費用は少なくなります。
また注意点として、消耗品の耐用年数は新品と交換された日から計算されます。
例えば自分が入居する前に住んでいる人が使っていたら、その期間も耐用年数に含まれます。
つまりクロスの場合、前に入居していた方が6年以上住んで交換していない場合は、耐用年数を過ぎているので、いつ破損しても交換費用は1円になります。
ここは意外と見落としがちなポイントなので注意しましょう。
参考までに主な消耗品の耐用年数を挙げておきますね。
消耗品名 | 耐用年数 |
クッションフロア | 6年 |
カーペット | 6年 |
クロス(壁紙) | 6年 |
エアコン | 6年 |
インターフォン | 6年 |
金属製以外の家具(たんす・戸棚) | 8年 |
便器や洗面台などの衛生設備 | 15年 |
ちなみにクッションフロアを張り替える場合は、1㎡あたり材料費と施工費を合わせて3,000~4,000円程度。
クロスを張り替える場合は素材のメーター計算になり、1㎡につき700〜800円くらいが賃貸の場合の相場です。
たまにクロスを張り替える際に「クロス全面を張り替える必要がある」と言ってくる業者がいるのですが、クロスは傷が付いている箇所のみで大丈夫です。
賃貸における修繕費の相場を知っておくことも大切です。
- 費用を負担する場合は経年劣化分を差し引く
- 長く住めば住むほど費用は少なくなる
- 前に住んでいた人の期間も耐用年数に含む
- 修繕費の相場を知っておく
退去立会いの注意点
①自分の主張をはっきりと伝える

退去の立会当日は、管理会社のスタッフや委託された立会業者の方と一緒に部屋の中を見て回ります。
その際に部屋の傷や汚れについて、自分がつけてしまったものなのかを確認されます。
この際に入居時からあった傷だったり、経年劣化によるものであれば、自分の主張をはっきりと伝えましょう。
ただし、費用を抑えるために何でもかんでも主張すればいいという訳ではありません。
それではただのクレーマーになってしまいますからね。
- 自分の故意や過失なのか
- 経年劣化はどれくらい考慮されるか
- 提示された金額は相場と比較して妥当か
こういったポイントに注目し、しっかりと根拠を提示した上で、自分が正しいと思ったことを伝えましょう。
②納得ができなければサインはしなくていい

立会いの時に退去費用の見積もり書にサインを求められることがありますが、内容に納得できなければサインをする必要はありません。
その際に
サインをもらえない場合は家賃が発生し続けますよ?
と言われるかもしれませんが、
- 解約予告通知の送付
- 鍵の返却
法律上この2つを行えば、部屋の明け渡しをしたことになります。
サインを拒んだとしても、家賃が発生することはないので安心してください。
また仮にサインをしてしまっても後から交渉をすることは可能です。
③退去時の部屋の写真を撮っておく
退去後のトラブルを防ぐために、退去時の部屋の写真は必ず撮っておきましょう。
部屋全体だけでなく、各箇所のアップの写真もあるといいですね。
あとで追加で費用を請求された時などに、証拠として提示することができます。
④退去費用には時効がある
退去費用には時効があります。
退去費用の支払いが必要だったとしても、退去日から1年の間、請求がない場合は時効が成立します。
もし退去日から1年以上経過した後に退去費用の請求が来た場合は、支払いに応じる必要はないので覚えておきましょう。
アパート退去前に掃除は必要?

結論からお伝えすると、掃除はしておきましょう。
物件を退去した後にはすぐハウスクリーニングが入りますが、最低限の掃除を行っておくことは借り主側のマナーです。
また掃除を行うことで、余計な請求をされずに済んだり、敷金が多少多く返ってくることもあります。
僕も感謝の気持ちを込めて念入りに掃除をしたのですが、余計な請求をされることはありませんでした。
参考までに、特に頭を悩ませる「サビ・カビ・シミ」の効果的な掃除方法も紹介しておきます。
①ステンレスなどのサビ

キッチンまわりなどステンレスのサビなら
- スチールウールたわし
- 重曹スプレー
この2つでほぼ綺麗になります。
実際に磨いたあとはこんな感じになりました。

いくら拭いても落ちなかったサビが、スチールウールたわしと重曹スプレーであっという間にピッカピカになってくれて感動しました。
②ゴムパッキンなどのカビ

キッチンやお風呂まわり、サッシなどのゴムパッキンはカビが発生しやすいです。
カビ取りとしてカビキラーが有名ですが、カビキラーの「ゴムパッキン用」があるのはご存知でしょうか?
通常のスプレータイプではなく、ジェル状になっているので、縦に塗っても流れ落ちにくく非常に効果的です。
必要なのは下記の2つです。
- カビキラー(ゴムパッキン用)
- ペーパータオル
やり方としては、ジェルを塗った後にペーパータオルで押さえつけ、30分程度放置してからジェルをしっかり洗い流します。
カビの根が深く1回で完全に落ちない場合は、何度か繰り返すことで落とすことができます。
僕はジェル状タイプは今回初めて使ったのですが、使いやすい上にあっという間にカビを殲滅してくれたのでかなり助かりました。

(※右側の画像、中央の黒っぽい部分はカビではなく傷です)
ただカビキラーは非常に強力な塩素系漂白剤なので、必ず記載されている使用上の注意を守って使用しましょう。
③テーブルなどのシミ

木製のテーブルなどで、コップを置いて放置した時にできてしまうシミ。
厄介なシミですが、
- マヨネーズ
- ペーパータオル
この2つでかなり落とすことができました。
この方法を知った時には
これ悪化するんじゃね?
と思ったのですが、マヨーネーズに含まれている油分が、シミを浮き上がらせてくれます。
手順としては
- シミの部分にマヨネーズを塗る
- マヨネーズの上からペーパータオルでしっかり押さえつける
- 30分程度放置する
- マヨネーズを綺麗に拭き取る
シミがまだ残っているようなら工程を繰り返すことで、徐々にシミが取れていきます。
注意点としてはマヨネーズを放置したままにすると、新たなシミができてしまうのでしっかりと拭き取りましょう。
引っ越し業者にも要注意
退去の立会いまでに、家の中は何もない状態にしておく必要があります。
自分で荷物をすべて運び出せる場合はいいのですが、引っ越し業者を使って荷物を運び出す場合はちょっと注意してください。
というのも、中には料金をふっかけてくる引っ越し業者が結構います。
適正な料金でお願いするためには、1社だけではなく複数の引っ越し業者から見積もりを出してもらうのがポイントです。
ただし、1社ごとに見積もりを出していくのは手間なので、一括で見積もりを出してくれる【SUUMO引越し見積り】を活用するのがおすすめです。
SUUMOは全国に対応しているので、どの地域でも無料で引っ越し屋さんを比較できます。
退去費用もそうでしたが、損をしないためにはその業界の相場を知ることが何よりも大切です。

【アパート退去の立会い方】退去費用で騙されないための知識まとめ
退去費用に関して、業者から請求された金額をそのまま支払ってしまう方は多いです。
もちろん優良な業者もいますが、借り主が知らないことをいいことに好き勝手やってくる業者が存在しているのも事実です。
なので、事前に原状回復についての知識をつけ、お話した退去立会いのポイントをしっかり覚えておきましょう。
- 自分の主張をはっきりと伝える
- 納得ができなければサインはしない
- 退去時の部屋の写真を撮っておく
- 退去費用には時効があることを知る
知識がない状態で退去の立会いに臨んでしまうと、
- 負担する必要がない修繕費を負担させられる
- 経年劣化を考慮されない
- 架空の費用を請求される
こういったことをされても気づくことができません。
退去費用で損をしないように、必ず知識を身に付けてから退去の立会いに臨むようにしましょう。